英語を習得方法は色々あります。
英会話スクールに通ったり、留学したり、独学で学んだり・・・。
実は英語を習得するための成功のカギは、科学的に証明されているのです。
英語をこれから学ぶ方、今学んでいる方は、成功の秘訣に沿って効率よく学習を進めていってくださいね。
脳内の言語処理の仕組み
私たちの大脳の大脳皮質という部分には、視覚野、聴覚野といった特定の機能に関連する領域があります。そして、言語についても様々な領域が関わっています。その中でも言語中枢(言語野)と呼ばれる領域が存在しています。
この言語中枢はブローカ野とウェルニッケ野という2か所に存在しています。ブローカ野にある中枢、ブローカ中枢は運動性、ウェルニッケ野にある中枢、ウェルニッケ中枢は感覚性です。
ブローカ中枢は「話す」担当。自分から発話する時の言語処理を行います。文法の処理もブローカ野で行われています。一方でウェルニッケ中枢は「聞く」担当。言語を聞き取る、理解するという作業を行っています。
言語処理には、言語中枢の他、角回という読み書きの能力に関わる部位、視覚・聴覚といった感覚を司る部位、運動を担う部位など、脳の様々な部位が相互に関連しあっています。毎日簡単に扱っている日本語の処理ですら、脳の様々な部位が機能しているのです。
ただ、日本語を話す私たちの脳は日本語処理用に作られています。
英語に慣れていない日本人が英語を話す場合、いったん文法処理のためブローカ野に情報が伝達されることとなります。当然、そこでの処理に時間がかかればかかるほど、会話のスムーズさが失われるわけです。
ご存知の通り、日本語と英語では文の組み立てがまったく違います。英語をスムーズに話すためには、私たちの脳内に「英語回路」を作る必要があるのです。
英語回路を作るとは一体どういうことでしょうか。
英語回路とは、英語の文法体系、つまり英語の語順で処理する能力です。
日本語を話す時には、「『本屋へ行った。』は、行くという動詞に助詞『た』を組み合わせて過去形になっているから、過去の出来事について話しているんだ」などと考えることなく、聞いた瞬間に過去の話だと理解できます。
ただ、これが英語となると、「I have been to Osaka. は、私は大阪へhave been toってなんだっけ。あ、現在完了形の経験か。じゃあ、大阪へ行ったことがあるって言ってるのか!」と考えてしまうこともあるかもしれません。
脳内で英語を日本語の語順に直したり、文法処理を行う作業をすると、当然処理に時間がかかります。
文法処理に時間をかけることなく、読んだり聞いたりしたことをすぐに理解し、自分の伝えたい事を言葉にできるようにするには、体内に英語的感覚を取りこむ必要があります。
この英語的感覚、つまり英語回路は、総合的な力です。
文法や語彙の知識があるだけでなく、必要な知識にアクセスできる脳内ネットワークと、必要な情報にすぐにたどり着くためのスピードが求められます。
では、知識を得るための学習と、その知識を使いこなすためのトレーニングについて、詳しく見ていきましょう。
学習の科学
脳科学で学習とは「脳内に新たな情報処理の神経回路網を作ること」です。
学習の効果は年齢を問わず確認されています。脳の神経細胞(ニューロン)は年齢とともに減少するのですが、細胞同士をつなぐ神経線維は学習によって枝分かれしたり太くなったりしていきます。神経線維同士がつながるシナプスも学習によって増えるため、結果、脳内の神経回路が増え、情報の受け渡しがしやすくなるのです。
脳は、何かを行う際、最短ルートで情報を流そうとします。はじめは遠回りしていても、同じ情報を何度も何度も流すことで、脳内に確実なネットワークが完成し、最短ルートが確立され、迷うことなく情報にたどり着く、つまり記憶に留めることができるのです。九九や百人一首など、小学校で繰り返して声に出したり書いたりすることで覚えた人も多いのではないでしょうか。
面白いことに、一つのスキルや知識を身につけようと学習をすることで、脳のベーシックな働きも向上することがわかっています。サッカーのシュート練習を毎日していたら体力もついた、というのと同じです。
逆に使わないと脳は退化していきます。
久しぶりに英語に向き合って、「昔はもう少し簡単に覚えられたのになぁ・・・」という感覚を持つ方もいるのではないでしょうか。
脳トレで有名な川島隆太教授によると、前頭前野を活性化することで学習効率が上がるそうです。文法処理を行うブローカ野も前頭前野にあります。
前頭前野は、集中力、やる気、コミュニケーション力、記憶力などを司る部分で、使っていないと劣化していきます。脳を鍛えていなければ、昔のように覚えられなくなるのはごく自然なことなのです。
英語の学習をがむしゃらに取り組んでも、思ったような結果が出ないのは、脳トレが不十分だからかもしれません。
新しい情報を定着させるため、器となる脳からしっかり鍛えていきましょう。
科学的根拠に基づいた究極のトレーニング法
筋トレを行うのに、鉛筆を毎日持ち上げる人はいません。ある程度負荷がかかる動作をするからこそ、筋肉が鍛えられていくのです。
脳も同じです。簡単なステップではなく手間をかけた方が、脳はよく働きます。
脳を活性化するために効果的なトレーニングが「音読」です。
音読は、黙読のときに使う神経に加え、声に出してさらにその音を聴くという作業が入るため、より多くの情報伝達を行うこととなります。実際、音読をしている時には、前頭前野だけでなく脳の70%が活性化されるようです。
しっかり理解した上でトレーニングを行い、教材の英文を暗記するぐらいまでになると、脳内のデータベースに英語の構文が記録されていきます。
データベースの取り出せるところに保存された文型は、聞いた時にも日本語に訳さず理解することができますし、話したり書いたりするときにも使うことができます。
こうして、瞬時に反応できる文型を増やしていくことが、学習とトレーニングによる英語回路作りなのです。
音読トレーニングは、文字を音声化するトレーニングなので、もちろんスピーキングやリスニングにも効果があります。自分が言える英語は聞きとれますし、声に出すトレーニングによって、英語を話す時に使う筋肉を鍛えることもできます。
ただし、音読の教材としては、難しすぎないものを選びましょう。
情報を処理する際には、ワーキングメモリと呼ばれる作業記憶を使って、いったん記憶してから理解したり、声に出したりしています。入ってきた情報を理解するために、たくさんのワーキングメモリを使ってしまうと、記憶するために使えるリソースが減ってしまい、キープできる情報量が少なくなってしまうのです。
日本語でも、自分が苦手とする専門的な話を聞き、ほとんど内容を覚えていないという経験があるかと思います。
英語も同様で、あまり難しすぎると逆効果です。
トレーニングを行う際には、自分のレベルに合ったものを選び、少しずつ英語回路を作っていき、レベルアップを目指していきましょう。
まとめ
英語を習得するためには、日本語を介さず理解し、話すことが必要です。
私たちの脳内には、色々な処理を担当する分野をつなぐネットワークがあります。そのネットワークは学習によって成長させることができます。
日本語を介さずに英語を理解したり話したりするため、学習とトレーニングによって英語回路を作りましょう。
音読トレーニングは、英語回路構築のためだけでなく、スピーキング、リスニング対策にも最適です。
今日から音読トレーニングを習慣にして、英語習得を目指しましょう。