英語学習者として伸ばしていきたい「英語力」。
では、具体的に「英語力」とは何を表すのでしょうか。
そして、その英語力を伸ばすためにはどうしたらいいのでしょうか。
言語の構成とは
英語に限らず、言語を分解して考えるときには、単語、文、音の3つのポイントから考えることができます。
それぞれに小さい塊があって、その塊がルールに沿って組み立てられることで言葉が作られます。
例えば単語レベルで考えると、「手」+「料理」という小さい塊がくっつくと、「手料理」という、お店ではなく自分で作った料理という意味の単語ができます。
そして、いくつもの単語を組み合わせて、「私は+母の+手料理+が+好き+です。」と言った具合に、文章が完成するのです。
また、文自体も、起承転結や「なぜなら」の後には理由を表す文がくる、など、色々なルールによって組み合わせられ、会話やプレゼン、エッセイや本などが完成します。
英語も本質は日本語と同じ、まずは、小さい塊の単位である「単語」と、それを組み合わせるルールである「文法」、そして話すための音「発音」の3つを学ぶ必要があります。
この3つは順番にではなく同時に学びましょう。
単語だけ覚えても、その単語を組み立てるためのルール(文法)がわからなければ、意味のある文を組み立てることができませんし、発音がわからなければ、聞いたり話したりができません。
とりあえず単語は文字で覚えて、それを話さなければいけないときに発音を学ぶ、などと分けて学ぼうとすると、結果的に聞いた時にもわからず調べることになったり、覚える時に日本語読みでイメージされたものを直さなくてはいけなくなったりと、余分な手間と時間がかかってしまいます。
4技能から考える
さて、単語、文法、発音を学んでいくわけですが、実際に言語は次の4つの技能で使われます。
4技能、つまり「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つです。
それぞれの関係はこちら。
「話す」「書く」はどちらも自分から発信するためのアウトプットのスキル。書く練習をすることで文を組み立てることができるようになり、話す能力もあがります。また、話せる表現が増えれば、そのまま書けることも増えていきます。
「聞く」「読む」はどちらもインプットのスキル。読んでわかる英語は、音がわかれば聞けますし、同じ様に聞いてわかる英語は、スペルがわかれば読めます。
文字と音の関係も同じです。「話す」「聞く」という音声に関連するスキルでは、話せる英語は聞ける、という鉄則があります。また聞き取れるのであればそれを真似すれば話すことができます。
「読む」「書く」という文字のスキルも、読んだものを真似て書く練習ができますし、書ける英語は当然読めるということになります。
つまり、関連するスキルには相互関係があり、一つを伸ばすことでもう一つのスキルも伸ばすことが期待できます。
英語を学ぶ際には、他を捨てて1つのスキルだけ集中的に伸ばすという意識で取り組むのではなく、全体に関係しあっていることを理解した上で、より伸ばしたいスキルに効くトレーニングを選んで取り組むと良いでしょう。
英語を使えるということ
英語を学ぶ目的が、英語という言語の研究だという人はほとんどいないはずです。
ほとんどの方は、英語を使えるようになりたいと思って、学習に取り組まれていることでしょう。
では、「英語が使える」というのはどういう状態を指すのでしょうか。
平たく言うと、文法、単語、発音のリソースがあり、それを4技能で使うことで目的を達成できること。
最初は「旅行でお土産を買う」とか「好きな洋楽を歌う」などの限定的な目的でも構いません。
少しずつリソースを増やし、使う訓練をすることで、できることが広がっていきます。
英語のスキルは少しずつ身についていくものです。
学習を続けることで十分目指せる「英語が使えるレベル」になると何ができるのか、下記に紹介します。
到達目標としてイメージしてみると、実現しやすくなりますよ。
英語が使えるレベルとは
- 【Listening】誤解なく聞き取れる
一字一句漏らさず聞き取れるとか、専門用語も完璧に理解できるとか、そんなレベルを目指す必要はありません。(通訳や文字起こしの仕事を目指すなら別ですが)
相手の意図を誤解しないで理解できるリスニング力があるレベルです。 - 【Reading】英語の文章を自然なスピードで読んで理解できる
よく日本人は読めるけど話せないといいますが、1ページの英語を読むのに辞書を引きながら30分かかるようでは、英語を使えるとは言えません。
戻り読みせず、自然なスピードで読んで理解できるレベルになってようやく「使える」と言えます。
wpm(word per minute)という1分間に何単語処理できるかという数字を指標に考えると、1分に150~160語読めるくらいから使えるレベルだと言えるでしょう。
この速さはラジオやPodcast、オーディオブックのスピードだと言われています。 - 【Writing】自分の意図が伝わる、人格や知性を疑われないレベルの英語が書ける
2と同じように、日本人は英語を書けるのに・・・というのもよく聞きます。
ただし、本当に使えるレベルは、5行のメールに30分かけて完璧なものを作るというレベルではありません。実際に使うためには、言いたい事を支障ないスピードで書ける必要があります。
そして、ネイティブが書くような英語とは言わなくても、最低限、意図せず失礼な英語や幼稚な英語を避けられるレベルは必要です。 - 【Speaking】言いたい事が日本語から訳すことなく英語で出てくる
前もって準備した英語だけ話せるというのは、残念ながらまだ「使える」レベルではありません。自分の言いたい事を脳内の英語ストックから適切に組み合わせ、タイムラグなしに口から出せるレベルが「使える」レベルとなります。
多少の文法ミスや、不自然な単語などがあったとしても、相手がストレスなく理解できれば、使えると言ってよいレベルです。
4技能より大切なコミュニケーション力
上記の4技能の使えるレベルを目指すことはもちろん大切ですが、英語を使う目的が「会話」であるのならば、それより大切なのが「コミュニケーション力」です。
よく会話はキャッチボールに例えられます。
そもそもキャッチできないとか毎回大暴投ではキャッチボールになりませんし、うまく投げられても、投げっぱなし、受け止めっぱなし、でもいけません。うまく続けるためには、ちゃんと相手の構えているところに投げるとか、相手のボールが届く距離で構える、という工夫も必要ですよね。
コミュニケーションの定義は「意志や思想、感情などを伝達し合うこと」。
つまり、「自分の伝えたい事を正しく伝え、相手にも理解してもらうこと」。
いくら自分の意見を伝えるのが上手でも、いくら相手の言っていることを完璧に理解できても、一方通行であればそれはコミュニケーションではありません。
では、さらに、スムーズなコミュニケーションをとるために必要なポイントを見ていきましょう。
- コミュニケーションへの積極的な姿勢
精神論か、と思われるかもしれませんが、実は結構大切なポイントです。
まず、文法の正確さばかりを気にしているとコミュニケーションが取れないことがあります。
正しいかどうかをぐるぐる頭の中で考えて話せない傾向がある方は、間違っていても、単語やジェスチャーだけでもいいので、とりあえず伝える努力をしましょう。
また、英語力に自信がないと消極的になりがちです。私もホームステイをしているときに経験しましたが、複数人のネイティブスピーカーが会話している場にいると、相槌と笑顔だけで終わってしまうのです。
慣れるまではなかなか難しいと思うかもしれませんが、自信がないからと徹底的な聞き役に回るのではなく、少しずつでもコミュニケーションに参加しましょう。場数を踏むと慣れてきます。最初は一対一のコミュニケーションで自信をつけると、少しずつ複数での会話で積極的に参加できるようになりますよ。 - 相手の話をきちんと聞き、分からないときは聞き返す
コミュニケーションはキャッチボールです。ボールを投げたら相手は投げ返してきます。
良い聞き役でもあることが上手なコミュニケーションの秘訣。
そして、相手の言っていることがわからなかったり、何通りにもとれるような言い方をされたら、遠慮しないで聞き返したり確認したりすることが大事です。
例えば、土曜に “next Sunday…” と言われたら、次の日の話なのか、1週間後の日曜の話なのかかはっきりしません。そんな時は、”You mean, tomorrow?” などと確認してみましょう。
お互いに正確に意思疎通することがコミュニケーションの目的ですから、相手も聞き返されても迷惑だとは思いません。遠慮しないで! - 興味を持って聞き、質問やコメントで広げる
話すことが山ほどあって、ただ誰かに向かって話したい、という人の話を聞く場合は別ですが、普通は短い相槌ばかりだと会話が続かなくなります。
「今日こんなことがあってね・・・・。」
「へぇ。」
「それで~さんがその時ね・・・」
「ふーん。」
「それから~が・・・」
「うん。」
このあたりで、もしスマホなんか見ながら聞いてたら「ねぇ聞いてる?」と言われたり、そうでなくても、この人私の話に興味ないんだな、と思い始めるでしょう。
会話を続けるコツは2つ。
質問をすることと自分のことについて話すことです。
まず、話を広げるなら質問はWh-Questionをおすすめします。
例えば、「今日Aちゃんに会ったよ。」に対して、「元気だった?」のような、「はい」か「いいえ」で答えられるのがYes-No Question。
それに対して、「何」「誰」「どこ」「いつ」「なぜ」「どのような」のような、具体的情報を求める質問をWh-Questionと言います。「どこで会ったの?」「何してた?」などといった情報を引き出すWh-Questionの方が、話が広がりやすいのです。
また、「私がAちゃんに最後にあったのは去年の夏だな~。」などと自分について話すのも会話を広げるには効果的です。
ただし、相手の話をすぐに遮って自分のことばかり話さないように注意!
この辺の匙加減は、日本語のコミュニケーション力と同じですね。 - 無言・無反応を避ける
英語で話しかけられた際に、相手の言ったことを理解しようと頭の中で復唱したり、自分の言いたいことを頭の中で組み立てたりして、すぐに応答できない時があるかもしれません。
それでも、何かしらの反応を返すようにしましょう。相手はあなたの心を読めるわけではないので、話しかけて無反応だった場合、何か言おうとして考えているのか、それとも聞こえてなくて反応していないのかわかりません。
言いたい事をまとめるのに時間がかかる場合には、日本語の「えっと・・・」に当たる”Well…”とか、「考えさせて」や「難しいなぁ・・・」のように、”Let’s see…” や “That’s a tough question.” など、一言入れるだけで、相手に「考えてます」が伝わります。
逆に言われたことを理解するのに時間がかかるときは、”You mean he didn’t come to work?” (彼は仕事に来なかった、ってこと?)のように、考えをまとめながら相手に質問するというのも手です。
何も言えなかったら、大きくうなずく、首をかしげる、困った顔をする、何か思いついたようなジェスチャーをする、など、何か反応することで、相手は自分の投げたボールがあなたに届いたとわかってくれるでしょう。 - ジェスチャー、アイコンタクト、抑揚などをうまく使う
事務的に情報を伝えるだけであれば、メモを渡せば事足ります。
スムーズにコミュニケーションをするためには、言葉だけでなく、それに載せる感情や、言葉以外の情報も加えて表現しましょう。
まず適度なアイコンタクトは円滑なコミュニケーションに必要です。話している間ずっと凝視しているのも不自然ですが、全く目が合わないと否定的な印象を与えてしまいます。
アイコンタクトを取るのが苦手な方は眉のあたりを見るなどすると良いでしょう。
あまり一瞬で目をそらすと後ろめたいような印象を与えてしまうので、3秒程度のアイコンタクトをおすすめします。
そして、ジェスチャーや抑揚も大切です。
単語が思い出せない場合や知らない場合、ジェスチャーで相手に伝わることもあります。
あなたが作家であれば、本の中で使えるツールは「文字」だけです。状況や登場人物の感情を説明するには色々な言葉が必要となります。
例えば、「本当に?」という一言、文字だけであれば、「怪訝そうに」「喜んで」「ほっとして」「念を押すように」などなど、色々なパターンが考えられますが、そこに表情と抑揚やトーンを加えることで、その中のどの感情で発した言葉なのか、相手に伝えることができるのです。
まとめ
英語力をつけるというのは、単語、文法、発音の情報を自分の中にストックしていき、それを、読む・書く・聞く・話すの4技能でうまく使えるように、適材適所で取り出す訓練を積むことです。
ただし、使える英語というのは、4技能にコミュニケーション力が備わってこそ。
バランスの取れた英語力を目指して、楽しく学習を続けていきましょう!