英語を読んでいると、つい一字一句訳してしまったり、日本語の語順で考えて戻り訳をしてしまったり、ということはありませんか?
英語を英語の語順のまま理解する「英語回路」を作るのにおすすめの方法に、多読があります。
今回は、多読のやり方からおすすめのサイトまでご紹介します。
多読とは
内容をじっくり理解しながら読む「精読」に対し、辞書を引かずどんどん読むのを「多読」と言います。
辞書を引かないということは、知らない単語が出て来たら推測しながら読むということ。
何度も出てくるどうしてもわからない単語があれば辞書を引いてもいいとは思いますが、それでも1ページに1語くらいに留めるべきです。
基本は、よくわからない単語が出てきても推測、または飛ばし読みをしていきます。
特に形容詞は、「ポジティブ」か「ネガティブ」かのどちらかを推測できれば良しとしましょう。
例えば、
She was shocked to hear the dreadful news.
と言う文で、”dreadful”がわからなくても、「何かニュースを聞いてショックを受けてるんだから、dreadfulはネガティブな意味っぽい」と考えられれば大丈夫です。
わからない単語がありすぎて、内容を推測することが難しいようであれば、その本はまだあなたにとって難しすぎるということなので、もう少し易しい本に戻りましょう。
多読とは「辞書を引かなくても理解できるものを、意味を推測しながらたくさん読む」と言うこと。
興味が湧かず全然ページが進まないような本を手に取ったり、難しすぎて理解できないようなレベルの本を手に取ったりしたら、スパッと切り替えて、違う本に取り組む必要があります。
つまり、「辞書を引きながらハリーポッターの原書を何カ月もかけて、日本語版と照らし合わせて読む」のは精読で、「1ページに2行ぐらいしか英文がない10数ページの絵本から始まり、1ヶ月後には、1ページに5~6行の本を含め、トータルで30冊は読んでいた」というのが多読なのです。
活字慣れしていない方は、最初から難しいものに取り組むと挫折しやすいので、こんなに簡単でいいの?と思うレベルから始め「英語の本を読み切った!」という成功体験を重ねていくのも大切です。
もちろん、すでに英語ができる方は、無理に易しい本を読む必要はありません。ペーパーバックや新聞など、興味のある難しいものをたくさん読んでいきましょう。
多読の効果は?
では、多読はなぜ良いのでしょうか。
まずは、膨大なインプットができるということ。
第二言語習得研究でも言われていますが、何においてもまずはインプットが必要です。
インプットがあって初めて、自分の中に「中間言語」と言われる自分なりの英語ルール(例えば、「過去の意味の動詞は-ed」など)が作られます。もちろん全ての過去形が「‐edの形」ではありません。中間言語は仮説検証が必要な「自分ルール」なので、アウトプットをして検証しながら、徐々に英語の精度を高めていきます。
読む作業はインプットです。
易しいものはどんどん読み進められるので、結果たくさんの量の英文に触れることができます。
つまり、「易しいものを読む多読」でインプットの量を増やすことができるのです。
人はインプットしたもの全てをアウトプットできるわけではありません。
だからこそ、インプットの量が少ないと、アウトプットできるものも少なくなってしまいます。
膨大なインプットは英語習得への第一歩なのです。
ちなみに、ジャパンタイムズの元編集局長、NHKの「ニュースで英会話」などを担当された伊藤サムさんは、積み上げた時に自分の身長の2倍になるくらいの本を読むことをお勧めしています。
私も、身長分ぐらいは超えたとは思いますが、2倍には達していないのではないかと思います。まだまだです。
身長の2倍の本を積み上げるためには、土台がしっかりしていないといけません。
基本は自分のレベルと同等か、自分のレベルマイナス1ぐらいの物を読むよう言われています。背伸びして難しいレベルの物から始めるのではなく、簡単すぎてあっという間に読めてしまうというレベルから始めて、ストレスなくどんどん積み上げていきましょう。
もう一つの多読の効果として、英語回路を作るのに役立つということが挙げられます。
英語回路ができている状態とは、英語の語順が自然に定着していて、英語を英語のまま処理できる状態です。
簡単な物では新たな発見がないかと思われるかもしれませんが、実は、簡単でも繰り返し正しい英文をインプットすることこそ大切なのです。
例えば、”go home” を含む文をたくさん読んだとします。
Let’s go home.
I want to go home.
He already went home.
そうすると、“I go to home.”という文を見た時に、違和感を感じるようになります。
「あれ、toがないほうが自然な気がするな・・・」
そういう感覚を持てる表現が増えれば増えるほど、自然な英語が使えるようになってくるのです。
もちろん、文法を勉強して「homeは副詞だから、前置詞のtoはいらない」と、正しい文章を作ることはできますが、日本語を話す時にそんな風に考えて文章を組み立てている人はいないはずです。
多読で身につけられる「英語感覚」はとても貴重なのです。
英語の語順の感覚も同じように、知らないうちに身についていきます。
これを学んだからこれが出来る、というように単純ではないので、目に見えた成果を感じるまで時間はかかりますが、自然に英語を使うためにはとても大事な多読。
興味を持てる本を見つけて、楽しく多読にチャレンジしてみてください。
多読初心者へお勧めのGraded Readers
簡単な本をたくさん読むといっても、英語の簡単な本をどうやって探したらいいかわからない、と思われる方も多いかと思います。
私がお勧めするのはGraded Readers(段階別読み物)と呼ばれる、英語学習者用に単語数、語彙や文法のレベルを制限して書かれた本です。Penguin Readers、Macmillan Readers、Oxford Bookworms、ラダーシリーズなどが有名ですね。
自分のレベルがわかったら同じレベルの別の本を探しやすく、十分に読んだらその後徐々にレベルを上げていくことができます。
初心者用のレベルは絵本だったり挿絵が多かったりするので、英語を読むことに慣れていないレベルからでも理解しやすくなっています。
Graded ReadersはAmazonで検索するといくつか出てきます。トムソーヤの冒険などの有名どころもあったりしますし、映画になっているものもあります。レベルにもよりますが、100ページにも満たない単語数で話をまとめてあるので、読みやすいです。
ただし、1冊読んだだけでは多読になりません。1冊あたり1000円の本でも、10冊、20冊と読み続けることを考えるとなかなかの出費になります。
どうしても手元に置いておきたい本以外は、私は図書館の活用をお勧めします。
図書館によるとは思いますが、ある程度の洋書はそろえていると思いますので、実際に手に取って難易度を確認してみると良いでしょう。
無料のebookが読めるOxford OWL
図書館以外では、無料サイトを利用するのがお勧めです。
Oxford University Pressはイギリスの出版社です。
Oxford OWLはOxfordが運営しているサイトで、登録することで130冊以上の本が無料で読めるようになります。(追加で購入することも可能です。)
登録はこちらのページから行えます。Parentのアカウントで登録してみましょう。
初級レベルは、読み上げ機能がついていて、発音の確認もできます。
ただし、Oxfordはイギリス英語です。発音だけでなく、色々な違いがあります。
例えば、アメリカ英語でお母さんは”mom”、イギリス英語では”mum”、アメリカ英語で色は”color”、イギリス英語では”colour”、といったスペルの違い。
エレベーターをアメリカ英語では”elavator”、イギリスでは”lift”、”football”はアメリカではアメフト、イギリスではサッカーのような単語そのものの違い。
他にも文法や表現にも色々違いがあったりしますので、アメリカ英語を学びたい方は、イギリスの出版物だけでなく、アメリカの本などにも触れると良いかと思います。
無料多読サイト ER Central (Extensive Reading Central)
ER Centralも無料のサイトで、機能を使うには会員登録が必要です。
Extensive Reading(多読)Centralという名前の通り多読向けのサイトですが、リスニング用の教材も用意されています。
リーディングもリスニングも1~20までレベル分けされています。それぞれ、Comprehension(内容理解)、Difficulty(難しさ)、Enjoyability(面白さ)が★で評価されていて、さらにレベル、単語数が確認できるので、読む教材を選ぶ際の参考にすると良いでしょう。
全てではありませんが、リーディング教材で音源付きのものもあるので、発音の確認も同時に行えて安心です。
ただし、多読でリーディングスピードを上げようと思ったら、音読してしまうと話す以上のスピードで読めなくなってしまうので、ゆくゆくは頭の中で音読しないで読むのを目標にしましょう。
ちなみに、このサイトでは、リーディングにかかった時間の確認や単語の意味の検索、確認テストやブックマークなどの機能が使えます。
特にリーディング時間が確認でき、各教材の単語数が明記されているので、そこからWPMを算出できます。
WPM(Words Per Minute)とは1分あたりに読める単語数のこと。それぞれの読み物の長さが違うので、単純にかかった時間だけでは読むスピードが上がったかどうかは確認できません。そこで、1分あたりに読める語彙数でスピードの変化を把握するのです。
WPM=総単語数÷読むのにかかった秒数×60
ネイティブスピーカーの平均は200~250WPMだと言われていますが、ひとまずは ラジオやPodcast、オーディオブックのスピード 150~160WPMのレベルを目指し、現状から少しずつスピードアップを目指していくと良いでしょう。
さらに、単語帳を作ったり、単語ゲームを行ったりもできるので、総合的に英語力を伸ばすことが期待できます。
洋書を楽しむ
数ページから数10ページ程度の本からスタートして活字慣れして来たら、簡単な児童書などからチャレンジしてみましょう。
私がお勧めする著者は、映画にもなった「チャーリーとチョコレート工場」の作者、Roald Dahlです。
絵本よりは長いと思いますが、挿絵が多く英語もそれほど難しくありません。結構テンポが良く読みやすく、お話としても面白いのでお勧めです。
他にお勧めなのは、英語化された日本のマンガです。
例えばこれ。「ドラえもん」です。
法廷ものとか医療もの、歴史ものなんかだと、使われる単語や言葉をすぐに日常会話で使えるわけではありませんが、ドラえもんは使える表現も多く、しかもマンガは絵が多くてわかりやすいので、とても良い勉強になります。
ちなみに、英語版ではドラえもんとしずかちゃんはそのまま、のび太はNoby、ジャイアンはBig G、スネ夫はSneechとなっています。
Amazonの無料本
Amazonには、いくつか無料の本があります。「洋書」で検索して、並べ替えを「価格の安い順番」にすると、Kindle版で無料の書籍が出てきます。
ただし、「¥0」と言っても、本当に無料の場合と(期間限定の場合もあり)、下記会員限定無料の場合があります。
会員には2種類あり、どちらも同時に読めるのは10冊までという制限はありますが、洋書だけでなく、英語学習に関する本もかなりたくさん読めるので、本をたくさんたくさん読む方にはお勧めです。
Kindle Unlimited会員無料
Kindle Unlimitedは、月980円で200万冊以上が読み放題になるプランです。
洋書だけでなく小説、実用書、コミック、雑誌など、幅広く読めるので、よく本を読まれる方にはお得なプランです。キャンペーンで初月無料などもありますので、気になる方はお試しください。
Amazonの検索画面で「Kindle Unlimited 読み放題対象タイトル」にチェックを入れることで、絞り込みができます。
Amazon Prime会員無料
こちらは月額500円、また年間4900円で、配送料無料、Prime Video、Prime Music、Prime Readingなどの特典が使えるプランです。
Amazonで買い物するなら翌日配送無料の特典は大きいので、私も加入しています。Prime Reading特典で1000冊以上が読み放題です。
Amazonの検索画面で「Prime Reading 読み放題対象タイトル」にチェックを入れることで、絞り込みができます。
Project Gtenburg
版権の切れた本の図書館で、Kindle版でダウンロードしたり、ウェブ上での閲覧したり、と形式を選べます。
「Search and Browse」の「bookshelves」から、気になる分野の本を選ぶと良いでしょう。著作権が切れているということは、昔に書かれた本なので、英語のスタイルが堅苦しくて読みにくいと感じるかもしれません。
日本語の本でも、最近のエッセイと夏目漱石とでは、文体の印象が違うような感じです。
Open Library
インターネットの図書館です。全部の本がデジタル版で提供されているわけではありませんが、会員登録をすることで、「borrow」が表示される本は2週間借りることができます。
蔵書をPDF化して貸し出ししているので、クオリティはデジタル書籍として作られたものよりは劣るかもしれませんが、著作権が切れていないものも通常の図書館のように貸し出ししているのが特徴です。
上で紹介したRoald Dahl の本も借りられます。
簡単な本から試したい方は “kids” のコーナーから借りると良いでしょう。
英字新聞を読む
ニュースの内容は、日本語でも英語でも基本的に同じです。すでに日本語で読んだ記事や、テレビのニュースで聞いたものなどは、すでに内容を知っているため、英語でも理解しやすいです。
ただ、最初からネイティブも読むような The New York Times や The Japan Times などを読もうと思うと、なかなかハードルは高いでしょう。
時事英語を学びたい英語学習者の皆さんへのお勧めをご紹介します。
The Japan Times Alpha
“The Japan Times ST” から2018年に改称され、Alphaとなりました。
学習者用の週刊新聞で、記事毎の難易度が示されていたり、和訳や要約が掲載されていたり、単語の意味が掲載されていたり、と、理解するためのヒントがたくさんあります。
時事英語だけでなく、英語学習に役立つ記事や、映画など文化関連の記事、英語のクロスワードや占いなどちょっと一息つけるようなものもあります。
オンラインのサイトでは、購読者用に過去の記事の掲載や記事の読み上げ音源や和訳などを提供しています。
https://alpha.japantimes.co.jp/
購読者以外には制限がかかっている部分が多いのですが、メルマガ会員になると月5本の記事が読めますが、登録なしでも、バックナンバーのTOP NEWS(数本の記事のみ)だけは読めます。
また、紙面見本の確認や、無料試読もできるので、一度レベルなどを確認してから購読や購入を考えてみるのも良いかもしれません。(1部320円 月ぎめ1,250円)
NHK WORLD – JAPAN
中級レベル以上には、NHKの国際向けサービスもおすすめ。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/
ニュースの視聴もできますし、記事を読むこともできます。
The Japan Times Alpha のような日本語サポートはありませんが、日本語のNHKニュースのサイトで同じ内容の記事を探して読み比べると理解しやすいと思います。
最終的に目指すレベル
最初は簡単に読めるレベルのものから読み始めていきますが、語彙力、文法力、読解力がつき、長文を読んでいても途中で放り出したくならなくなったら、いよいよ自分が読んでみたいものを楽しんで読めるレベルです。
好きな本を原書で読んだり、興味のある分野の雑誌を読んだり、ウェブサイトを見たり、英語で色々よんでみましょう。
このレベルまで来たら、本も興味のあるものは買って読んでも良いと思います。
1冊700ページにもなるような長編の小説もありますので、さすがに簡単なものを読んでいた時のように、1ヶ月に何冊も読めるわけではありません。
英語を学習している時、ハリーポッターシリーズを買って読みましたが、1回目はストーリーが気になるのでかなり速いペースで読んだので細部まで注意を払っていないので、次巻が出る前にもう一度読み直していました。他にも、気に入った本はたまに読み返しますが、やはり2回目は新たな発見があったり、よりスムーズに読めたりして楽しめます。
ちなみに、私はKindleを愛用していて、いくつかの本はKindle版で所有しています。Kindleは単語の意味を長押しで調べられたり、好みのフォントに変えられたり、読み終わるまでの予測時間が出たりして面白いのですが、紙の本を開いて「ここまで読んだ!」というのがわかる感じと、ちょっと前のチャプターに戻って読みたい時の手軽さも捨てがたいと感じています。
個人的にファンタジーやSFを好んで読みます。The Twillight Sagaにはドはまりしたなぁ・・・。
まとめ
多読はメリットがたくさんあります。
インプットを増やし、英語回路を作るだけでなく、読む本によっては自分の知識になったり、興味を満たしてくれたりします。
最近では、暇つぶしと言えばスマホ、となりがちではありますが、あえて読書に時間を割くことで、英語力の上達が期待できます。
大切なのは、「楽しく続ける」こと。
実際に本を買うか借りるか、Kindleのようなタブレット端末で読むか、スマホで読むか・・・。
自分が続けやすい方法で、面白いと思う本にたくさん出会ってほしいと思います。
読んだ本の感想を記録していくのも励みになるかもしれません。
私も身長の2倍を目指して頑張ります!一緒に頑張りましょう!