概要
聞こえた英文を書き取るトレーニングです。
トレーニングの効能
リスニング力アップ
通常のリスニングでは、内容を理解することが重要となります。
ところが、ディクテーションとなると、一字一句拾わないといけませんので、細部に注意して聞くことになります。
何度聞いても何を言っているかわからない部分や、実際には思ったのと違う英語を話していた、というようなことがあれば、それは自分のリスニングの弱点となります。
自分の弱点を客観的に把握することができるのが、このトレーニングの最大の効果です。
聞き取れなかった部分を認識して最後に文字を見ながら音源を確認することで、文字通りに聞こえるようになる音が増えていくはずです。
意識して弱点強化を図ることで効率的にリスニング力を上げることができるのです。
スピーキング力・ライティング力アップ
ディクテーションで向上するのはリスニングだけではありません。
ディクテーションを指導していて皆さんに多いミスが、aとかtheの冠詞が抜けたり、複数形のsや前置詞が落ちたり、というものでした。
どれも弱化の影響を受ける機能語なので(詳しくは下記の記事参照)、はっきり聞こえなくて当たり前なのですが、ネイティブはその弱い音でも聞き分けていますし、話すときもその音があることを意識しています。
聞こえない音のパターンから、自分に文法的な弱点がないか確認してみましょう。
書き取れないということは、自分が話すとき、書くときにも、落ちている可能性が高いです。
自分の英語の文法上の弱点を意識することで、話すとき、書くときにも、より正しい英語が使えるようになっていきます。
脳トレで定着率アップ
何度か別の記事でもお伝えしているように、脳は負荷がかかるほど鍛えられます。
当然ただ聞き流すだけよりも、文字を追いながら聞く方が脳に伝わる刺激が増え、脳が活性化されます。さらに話す、書くなどの行動が伴えば、より多くの刺激が脳に送られることになります。
書くトレーニングは、「読む・聞く・話す・書く」の4技能の中でも一番面倒なトレーニング。つまりより負荷がかかるので、結果、脳の活性化を促し、ぼんやり聞くだけよりも定着率を上げることができます。
トレーニング方法
準備するもの
- ノート・紙
- 鉛筆・ペン
- スクリプト(読まれる英文が書き起こされているもの)
- 音源
- 赤ペン
トレーニング手順
- 紙とペンを準備し、音声を再生する。途中で止めずに、聞こえなかった部分、書き取れなかった部分はスペースを空けておき、最後まで書き取る。
全くついていけない場合には、文章の終わりで一時停止しても良い。ただし、単語一つずつを細切れで書き取りしない。(※注1) - 再生が終わったら、記憶や文法力などで補える部分があればつけ足す。(※注2)
(”beautiful”など長い単語は”beau “など、途中でやめて次の単語を書いていきます。また、”in the house” のような単語のかたまりも、最後の “house” だけしか書く余裕がない場合もありますので、流れから “in the”を補える場合にはここで書き足していきます。) - 1→2を数回繰り返す。
- これ以上聞き取れない、または、これで完璧、と思うところでスクリプトを確認する。赤ペンで間違えたところを直していく。
- 間違っていた部分を意識して、もう一度スクリプトを見ながら音声を聞いてみる。
※注1:ディクテーションを自分の弱点把握に使う場合には、できるだけ自然な英語で聞けるかどうかを確認したいため、全文通してトレーニングを行う。
英語は単語と単語がつながることも多く、単語の切れ目で一時停止するのは難しい場合もある。短くポーズをしながら聞き取り訓練をすると、一つ一つの音を聞き取れるかにフォーカスしたトレーニングになってしまう。
※注2:通常のリスニングの際も、文法力や背景知識、音の変化の法則などを駆使して理解しているので、聞き終わった後で文法力で補足するのは問題ない。ただ、後のトレーニングのために純粋なリスニングでは聞けなかったものとして区別したいなら、予備知識で補足した部分は下線を引くなど工夫をすると良い。
トレーニングのコツ
- 読んだら理解できるレベルの教材からスタート
あまり難しいものを題材にすると、わからない単語や文法も多く、すぐに自分の英語力に反映させられるトレーニングにはなりません。 - 必ず赤ペンを使う
間違えた部分を意識し、分析するため、必ず赤ペンで答え合わせをしましょう。 - ノートのスペースを確保する
大きめの紙を使い、スペースがなくて書き取れないなんてことがないようにしましょう。ノートやルーズリーフの場合は、後で訂正、書き込みができるよう、1行空けて書き取るぐらいがちょうどよいです。次の文章が始まったら、ノートの次の行の頭から書き取りを始めるくらいの余裕をもって書き取っていきます。 - 一度に全部書き取ろうとしない
最初の1文が完璧に聞けたからと言って、全部書き切ろうとしないようにしましょう。
書く方が話すより遅いので、聞こえた1文を仕上げていると、次の2~3文は終了している可能性があります。コツは、「1文に最低1語は書き取る」ことを意識し、キーワードをばらして書き取って、徐々に肉付けしていくことです。
おすすめの組み合わせトレーニング
ディクテーションは弱点把握のためのトレーニング。克服のためには、「ライティング」「スピーキング」の能動的なトレーニングを組み合わせることが必要です。
音読筆写
間違えた部分、全然聞き取れなかった部分を、声に出しながら書く「音読筆写」で定着させるのがおすすめです。
顔を上げて書いた文書がスラスラ出てくるようになるまで、最低5回トレーニングを行いましょう。
自分の英語力の穴を意識的にアウトプットで埋めることで、正しい英語を定着させることができます。
オーバーラッピング / アイ・シャドーイング
間違えた部分を意識して、音声を聞きながら声に出すトレーニングを行いましょう。
聞こえなかった音を再生できるようになれば、次回は聞こえるようになる可能性が上がりますし、文法の間違いや知らなかった単語や表現も、繰り返し音読トレーニングを行うことで、定着させることができます。