日本に生まれた皆さんは、世界的に見ても難しい日本語を、あれこれ悩むことなく使いこなしていらっしゃいます。同じ様に、英語圏で生まれた方は、悩まずに英語を話すことができています。

日本人だから英語ができないのではなく、英語圏で育っていないから英語を話していないだけ。
個人的能力の問題ではないのです。

では、英語圏で生まれた子どもたちは、どのように言語が話せるようになるのでしょうか?

言語習得の仕組み

仕組みは英語も日本語も同じです。

単語習得のための第一歩として、言語はまず音として入ってきますが、音の認識は、どの言語に対応する設定になっているかによって変わります。英語圏で育つと「l」と「r」がはっきり聞き分けられるのに、日本人には同じ様に聞こえてしまうのは、日本人はラ行だけを捉える設定で言語を習得してきているからです。

音の特徴を捉えられるようになると、聴こえてくる音のかたまり、つまり単語がどのような特徴を持っているのかを学んでいきます。そうして自分の中に単語リストができていくのです。

たくさん言葉に触れる中で「たくさんあるときは s が付く」など言語の特徴も設定し、加えてある程度の単語リストが習得できてくると、その言語を感覚的に使えるようになるのです。

参考:船津洋『子どもはどうしてコトバを身につける?』(株式会社 児童英語研究所、2017年)

つまり、膨大な量の言語をインプットし、そこからルールや単語を学び、片言でのアウトプットが始まり、反応を見ながら単語の使い方を学んでいき、だんだんと単語がつながり、文で話せるようになる。そして学校でひらがな、カタカナを学び、漢字を少しずつ学び、音読や作文の練習を積み重ねてようやく4技能を習得する。子どもたちが言葉を話すのと同じステップで言語を習得するのは、やはり現実的ではありません。

ただ、日本にうまれたから日本語の遺伝子を持っている、というわけではないので、必要な量の英語に触れてアウトプットをしていけば、必ず誰でも英語ができるようになります。

大人になってからの方が言語習得が早い理由

帰国子女の子どもがペラペラ英語を話しているのを見ると、「小さい時からやっておけばよかった・・・」と思うかもしれません。

確かに、英語耳を育てるには幼児期のたくさんの英語インプットが必要という説があります。
私も英会話学校でベビー・幼児クラスから授業を受けている生徒さんは、やはり発音はきれいだな、と感じました。

発音の面では母国語の干渉がある大人の方が不利なのは確かだと思います。

ただし、大人には大人の武器があります。

それは、「知識と経験」です。

子どもの言語習得には膨大な時間がかかりますが、大人はそれを「知識や経験」でカバーすることができます。

例えば3歳の子どもが「promotion(昇進)」という言葉を聞いたとしても、仕事に関する背景知識がないとどういう状態なのかはっきりわかりません。一方で大人のあなたがpromotion=昇進と聞いたら、今までの色々な経験と結び付けられ、早く、そして深く理解することができます。

また、He has a son. (彼には息子がいる)という文を学んだとしたら、「息子のところは娘に置き換えられるな」とか、「息子は名詞だから、他の名詞を置き替えたら別の正しい文ができあがるな」とか考え、瞬時にいくつもの正しい文を作ることができるはずです。

もちろん、最大限に知識を活かすには、単語や文法の学習が不可欠ですが、逆に言えば、単語と文法を押さえれば上達スピードはぐんと上がるということです。

大人になってから勉強を始める方が、ルールを使いこなして効率よく言語習得ができてお得なのです。

また、発音もコツをおさえることで、きれいな英語が話せるようになります。
音は口の使い方で変わるので、どのように唇や舌、息を使うのかを学び、同じ音が出せるように練習あるのみ、です。

いつになっても、言語習得に遅すぎるということはありません。安心してください。