英語学習に限ったことではありませんが、皆さんが達成したいことは何でしょうか。

今思い描いた「達成したい状況」、つまり「ゴール」の決め方によって、成功するかしないかに大きな影響を与えたり、達成した時の幸せ度が変わってくるのはご存知でしょうか。

モチベーションやゴール設定について研究している社会心理学者、ハイディ・グラントの説をもとに、英語学習に活かす方法を紹介します。

ゴールには2種類ある

ゴールには「外因性」のものと「内因性」のもの、2種類あります。

外因性のゴールとは、他人の評価、つまり名声、権力、お金、人気などに基づくものです。

一方で内因的のゴールは、自分の内側から出てくるもので、人間の基本的欲求に関連するものです。

心理学での人間の基本的欲求は3つあります。家族やコミュニティなどとつながりを持ち、それを発展させたいという「関係性」の欲求、自らの意思で主体的に動きたいという「自律性」の欲求、そして自分には能力があると感じる「有能性」の欲求です。

では、この2種類のゴールのうち、幸せに結びつくのはどちらでしょうか。

「いくら稼ぎたい」のような目標を立てた場合、それを達成した瞬間は満足感があり幸せな気持ちになるでしょう。ただ、その気持ちは徐々に薄れてしまうので、また同じような幸せを感じるためには、さらに多くのお金を稼ぐ目標にたてる必要がでてきます。

一方で、内因性ゴールは、私たちが自発的に行動を続けるために必要な3つの欲求に基づいています。
本来の自分自身と向き合い自己が向上することにつながるため、内因性ゴールを掲げた方が人はより幸せを感じやすいと言われています。

こと英語で考えた場合には、外因性ゴールは学習を始めるための強い動機にはなりますが、英語習得という点で考えると継続性にかけます。
外因性ゴールで学習をスタートし、その後、自分の中に知的好奇心が湧き上がってきて、学ぶことが楽しいと思えるようになれば、学習を続けることができ、英語の習得に近づきます。

さしあたって外因性ゴールしかない場合にも、何らかの内因性ゴールが自分の中にないかと、自分を深堀してみましょう。

ゴール設定の際の注意点

では、成功するために、自分の成長につながる「有能性」にからめて目標を立てよう!と決めたとしましょう。

その際の注意点が2つあります。

1.達成したことがわかるゴールにする

「英語ができるようになる」といったざっくりしたゴールを立ててしまっては、いつまでたっても、どこが「できる」状態なのかわかりません。

「英語のニュースを聞いて言っていることがわかるようになる」といった、その瞬間に達成したことがわかる具体的なゴールを設定する必要があります。

2.達成可能な範囲で難しいゴールを設定する

科学的に、現状とゴールの距離が遠ければ遠いほど、脳が持てる力の全てを注ぐ、ということがわかっています。
逆に、簡単すぎる目標だと負荷がかかりません。

ただし、「達成可能な範囲で」というのがとても重要です。

不可能なゴールでは意味がありませんが、難しいゴールを設定すると、達成した時に、自分の能力だけでなく、難しい課題にチャレンジしたことも自信になるのです。

ポジティブ思考VSネガティブ思考

物事に取り組む際に、ポジティブ思考が推奨されることが多くあります。

ただし、目標を達成しようと思ったら、ポジティブ思考の中でも「達成した状態を想像しよう」といった「非現実的なポジティブ思考」はおすすめしません。

脳の働きを考えると、すでに目的地にいると思ったら、そこへ行くための行動をとらないからです。

ただし、現実的なポジティブ思考は有効です。

成功すると信じ、起こりうる障害を想定し、どう対処するのか、誰に何を聞いて、どう時間を作り、どう解決するかまで準備をしておくのです。

こうやって問題を解決するから成功するぞ!という、現実的なポジティブ思考を持っていると、心拍数も上がり、神経システムが活発になり、脳もあらゆる準備をし、行動の準備が整うのです。

同じ様に、ネガティブ思考にも良いものと悪いものがあります。

「成功できないかもしれない・・・」と落ち込んでしまうようなネガティブ思考は目標達成にはマイナスですが、「これは難しそうだから準備が必要だな」という良いネガティブ思考を持っていれば、ゴールへの障害を取り除いて進むことにつながります。

マインドセット:証明するか成長するか

ゴールへ向かって進む上で重要なのが、どういうマインドセットで動くかということです。

自分がどれだけできるかを証明する「証明マインドセット」の場合、英語ができるようになりたいという目標も、その能力や才能があるということを周りや自分に証明するために行います。

一方で、「成長マインドセット」の場合、今の自分と比べてより能力や才能のある自分であるためにゴールを設定します。

証明マインドの場合、目標へ到達する道のりで自分自身を評価するとき、「ああ、まだこの能力を持っていない。まだ自分の有能性を証明できない。」と考えてしまいます。
一方で成長マインドをもって取り組んでいると、もともとスタート地点からゴールまでずっと改善する過程にいます。だから、どの地点で現在地を確認しても、それは成長の過程であって、その時点で自分に備わっていない能力に嘆くことはありません。目的地までたどり着くには何が足りないかを確認し、さらなる改善に取り組むことができるのです。

ただし、成長マインドセットでスタートしても、常にぶれずにいられるわけではないかもしれません。

英語学習をする上では、TOEICなどテストの点数をレベル把握に使うことも多いため、客観的な評価を目にした瞬間に証明マインドに切り替わってしまいがちです。

自分を客観的にモニターして、どのマインドセットで動いているかを把握し、証明マインドになっていると気づいたら、どうやって成長マインドへ切り替えるかを考えてみましょう。

まとめ

何かに取り組むときに、ゴール設定をきちんとすることはとても大切です。

そして、ゴールを決める時も、できれば自分の内から湧き上がる気持ちも絡めたものにすること、そして、具体的で多少難しいものに設定することで、成功の確率が上がります。

ゴールに向かって走るときには、自分のマインドセットは常に変化し続けるものだということを念頭に置いて、時々一歩引いて自分を見つめるようにしましょう。そして、「証明マインドセット」になっていると感じたら、リセットして「成長マインドセット」にうまく切り替えることで、ゴールへ向かってスムーズに進んでいけるはずです。